キャリアコンサルタントという在り方

キャリアRe-Birth® 国家資格キャリアコンサルタント応援ブログ

ほんたうのさいはひ

さて今回も研修を受けての雑感。

JCDAオンラインライブラリーから

(会員限定の映像講座です)

https://www.j-cda.jp/member/online-library.php

 

『人生でほんとうに大切なこと』

公益財団法人 がん研究会有明病院 腫瘍精神科部長 清水研先生の講義です。

 

がん告知を受けた方のこころの軌跡、

そこにどう寄り添うか、

人の相談に乗る仕事の私たちに、何ができるか

深く、深く考えさせられる内容でした。

会員の方、是非、是非ご覧ください。

 

タイトルが

『人生でほんとうに大切なこと』でしたが

「人生でほんとうに大切なことは、これ」

という答えは、講義内にはありませんでした。

 

私はこのタイトルを見て

この言葉を思い出しました。

「ほんたうの幸(さいわひ)」

ピンと来る方、いらっしゃいますかね?

そう、宮沢賢治銀河鉄道の夜』です。

 

何を隠そう、私、1回目の大学では

宮沢賢治研究で卒論を書きました。

(2回目に入った大学では障がい児教育ね)

 

宮沢賢治作品の中には、この

【本当の幸い】とは何なのか、と言うテーマが

幾度となく出てきます。

有名なのは『銀河鉄道の夜』さそりの話。

今まで命をとって生きてきて、

今逆にいたちに追いかけられて井戸に落ち、

溺れていく最中に悔やんで祈ったさそりの言葉

「どうかこの次はまことのみんなの幸のために

私の体をおつかひ下さい。」

 

そしてこの話を聞いた後

主人公のジョバンニも言います。

「僕はもうあのさそりのやうに

ほんたうにみんなの幸(さいはひ)のためならば

僕のからだなんか百ぺん灼いてもかまはない」

これは辛い日常から離れ

大切な親友カムパネルラと2人きりで

銀河を渡る列車の旅に出ていることで

ジョバンニに幸福感、希望、勇気が湧いてきて

出た言葉と思われます。

 

この時、本当はカムパネルラは

それこそ【みんなの幸】のために行動し

衝撃的なことになっていた、というのが

悲しいのですが。

 

銀河鉄道の夜』は一番有名な作品ですが

実は私が一番好きな宮沢賢治作品は

『虔十公園林(けんじゅうこうえんりん)』

という短編です。

 

虔十(けんじゅう/けんじふ)という男の子がいて

多分今でいう、知的障がい児だと思います。

いつもみんなから笑われたり

ばかにされたりしていました。

 

ある日、虔十は親に

杉の木の苗700本欲しいと言いました。

親はびっくりしましたが

今まで何一つ頼み事などしなかった虔十の

初めての希望だったので

親は買ってくれました。

虔十は杉の木を、等間隔に、まっすぐに植え

(発達障がいかもしれませんね)

大切に育てました。

その杉林は近所の子ども達の格好の遊び場となり

多くの子ども達が、兵隊さんごっこをして行進し

大きな笑い声がいつもその林から響いていました。

 

やがて虔十は、流行病で亡くなりました。

 

20年後、この村出身の、偉い教授が

久しぶりに村へ帰ってきました。

虔十の杉林を見て、非常に懐かしく思います。

しかしこの林にも開発の手が迫りくる中

虔十の年老いた親が

頑張って手放さずにいることを知りました。

 

そこで偉い教授が

ここに『虔十公園林』という名をつけて

いつまでも保存することを提案してくれました。

教授がこう言います。

「あゝ全くたれがかしこく

たれが賢くないかはわかりません。

たゞどこまでも十力の作用は不思議です。」

そして虔十公園林はいつまでも残り

いつまでも子ども達の楽しい遊び場となり

いつまでも自然の美しさを見せてくれる場と

なったのでした。

 

…私はこの作品からも

【本当の幸いとは何か】を教えてくれているのを

感じるのです。

キャリアの研修から、全然関係ないことを想起し

思いを巡らしていました。

 

余命宣告を受けたがん患者さんにも

きっと本当に大切なこと、本当の幸いはあります。

社会的弱者と言われる方にも

望みを持てずに打ちひしがれている方にも

きっとあります。

誰にでも、その人の本当の幸いがあって

それを知り、目指し、体感できる人生を

みんなが送れるといいでしょうね。

 

そして私たちキャリコンは

相談業務で本当に大切なことは何か

ずっと考え続けていくのでしょう。

キャリアカウンセリングで

相談者の本当の幸いを見つめる過程に

お付き合いできる、

私たちは本当に

素晴らしい仕事をさせていただいていますね。

 

 

※参考文献『宮沢賢治全集6・7』ちくま文庫